夢とは別の、現実の夢たち
それでも、私やあなた、ミツバチの羽音、椿の紅色、梅花の香り、を夢としてしまうには傲慢だ。とっくに私の手では編み出せなかった生き物たちで溢れているのに。だって、胸を叩けば赤くなるでしょう、花の首をはねるような青白い手でも。
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空も、ひとつも、寝顔も、折りたたんだ地平を開いて、失明する光で引き裂きなさい、と過去へ話した。
未体験を語る
体験していないことを物語ってはいけないと、それは虚言だと指をさすなら、「最近、阿吽の仁王が夢に現れた。」と我々は夢さえ話すのも禁じられたろう。
猫の日なので、せっかくだから猫の寓話でも書こうかと座椅子でドーナッツ型に丸まった飼い猫を横に、来い、猫、猫、と脳内で唱えながら頭を絞っていると、
「そういえば、三本脚のカラスと三本脚のイヌならどちらが良かったのだっけ、最初から何かが増えて備わっているよりも、元々あったもの減ったほうが爪弾かれやすいのでは、千手観音や八咫烏は神聖化もされるけど、一本足の一本ダタラや一つ目は鬼や妖怪にされるじゃん、あ、でも、目 や口がいっぱいあっても怖いか、手足に限定して考えたほうがいいのかな。」
なんて考えていた頃の記憶が出てきたのだった。