涵養域

私のなかで滴る、 歳月をかけて凍った、氷柱のことを話そう くいしばっている 水の重み、 が、 地下へ、地下へ、と内部を蝕ばむ 私に垂れ下がった、 縫うための先端、 あくまでも、時刻という皮膚をつなぎ合わせ 気象をつかさどっていた、万年雪の、身体のそ…

心臓

私の 振動音で寝つけなかった夜、 あの棘の、 イラクサの葉汁を飲み干していた

また

砂を握った、 指のまたからまた流れていった かつて、 城や 複合体と呼ばれていた、私の単位 を、元に戻すため、 片目に、 水を撒き、 くちびるにまとめていく

離れた後

秋冬に髪を切ると「落ち葉は木の一部だと思う、それとも、葉自身だと思う」と、イチョウの並木道で聞いてきたあの人の質問とともに、美容室の床に落ちた髪の毛を見てしまう。 葉であれば、木から離されたあと、寿命が尽きてしまうのはいつだろう、とその時も…

夜の腐食

林檎の赤さは、 刈り取られ 熟した果実を、星状の斑点を、 手に 夕焼けに重ねてみて 黒ずみ 腐る、夜 目蓋を閉じたようにここにいない、のは白さ、